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1ホールのケーキで家が建つ

家の鍵を閉めて、カバンをしょいなおし、玄関先の階段を下りる
まだ朝の早くということもあって、正直私は眠気を棄てられずにいた
思わず耳がたれてくるが、なんとか気合を入れて立て直す
陽気な春の日だ
眼前に聳え立つ、大きなレンガ造りの教会
早朝のぼんやりとした日の光が頼りない影を作り出し、当り一帯を薄暗くしている。
ヒールを鳴らしながら綺麗に舗装された灰色の道を歩いていると、教会から賑やかな声が聞こえてくる
朝からトレーニングでもしているのかな?
仕事先までもう少し
教会からは大きな爆発音と、その後誰かの怒声
ここに越して来てから、3日に1度は聞こえてくるので慣れたものだけど
何が起こってるのかは未だに分からない
ボムとかクラッシュとかの誤爆?

仕事場裏口のゲートを開ける
どうせ今日も暇なんだろうなあ







「花屋」
一般的には布や金属で製造された装飾用の造花を扱う店舗又は卸の事。
ハナカゴの勤め先としては、生花を扱う販売店。従業員は店長とアルバイト各1名のみ。
往来の激しい教会跡地の程近くの立地でありながらその認知度は低い。






「店長ーおはようございまーす!」
「おはようハナカゴちゃん 今日もよろしくぅ」
「はーい……ここ1週間お客さん来てないから、掃除のやりがいが全っ然ないんですけどね」
「最近静かよねえ~EEEの社長さんもいらっしゃらないし」
「ついこの間就任した方でしたっけ えっと、あ、アイテールさん?」
「そうよ~良く青いお花を買ってくださる方ね」
「私あそこの商品好きなんですよー」
「新商品の”オドリ”買ってみた?」
「美味しかったんですけど、動くから部屋が汚れちゃいました」
「えーそうなの?気をつけなくちゃ」
「あはは、取りあえず開店準備してきますね」


店長との話を切り上げて掃除用具を取りにいく。
1日中暇をもてあました昨日、手入れをしたのでほこり一つついていない。
ほうきと雑巾、バケツを持って玄関へ。
花はバケツや花瓶、鉢に入れられて、甘いような青臭いような、美味しそうな匂いをさせて並んでいる。
ガラス張りのドアを開けて店先に。
芝生は最近店長と一緒に刈り揃えたから、普段よりさわさわしててくすぐったい。
耳につけたチュールを外して、木製の棚に引っかからないように畳んで置く。
……流石に1週間掃除攻めだったから、目立って汚い場所が無いなぁ。
取りあえずガラスを拭いてピカピカにしてみた。
中の様子を見て、店長が大体準備をしてくれたみたいだった。
入り口の看板をひっくり返して、開店です。

そう言っても直ぐに誰か来るわけじゃないから私は掃除を続けることにした。
ほうきを飲み込んで、ふわっふわの羽箒に。
外に並べてある花の花びら一枚一枚を拭いていくことにした。
これは5日前にやったから、少しはやる意味があるはず!
さあまずは柵周りを、と振り返ったときだった。
入り口に誰か居る!お客さん?!


「いらっしゃいませぇ!」
「はっはいぃ!」
「お客さま何かお探しでしたか?今なら在庫たくさんですよ!」
「わあ、僕はそのお客さんじゃなくてぇ」
「そうでしたか……申し訳ありません」
「えーっと……ごめんなさい……」
「……」
「そう、それで、トコバナさんいらっしゃいますか?」
「店長ですか?居ますよ~、呼んできますね」


「てんちょーっお客様でーす……いや、お客さまじゃないんですけど」
「どっちなのハナカゴちゃん」
「店長に、お客様です」
「だぁれ?偉そうな白い奴?」
「いえ、羽のある兵士っぽいさんでした」
「ぽい?ふーん?」



不思議な顔をしてそう言って、店長は玄関に向かう。
頭の植木鉢から生えた花がゆらゆら揺れる。
あの帽子は多分兵士さんのだ。教会の。
あまり見たことは無いけど。
お行儀が悪いけど、気になるから私も後について行った。


店長は兵士さんから封筒みたいなものを受け取って、嫌そうな顔をしていた。
兵士さんはおどおどしている。良く見たらまだ子供?
偉いなあ、ちっちゃいのに。

言付けがあるのか、店長は兵士さんに何かを伝えている。
頭の花が前後左右に揺れている。あれは……少し感情的になってるようだ。
多分兵士さんに向けてじゃないだろうけど、兵士さんの顔が泣きそうになっている。
店長が頭を下げて見送る姿勢に入る。
そしたら兵士さんは足元につけた機械をふかして、あっという間に教会のほうに飛んでいった。
……ああやっぱり、教会の兵士さんだった!



「なんだったんですか、店長?」
「ん?お手紙よ~白くて偉そうな奴から、アタシに」
「手紙?わざわざ直接ですか?」
「そーゆー奴なのよあいつ!昔っから面倒だわ~」

「そういえばさっきの兵士さん、まだちっちゃかったですね」
「アナタとあんまり変わらないわよ」
「えーっ 私あんなにこどもっぽく無いですよ!」
「そういうトコが?ね?あはは」
「ふーんだ、どうせ”誕生会”やり損ねて数年目ですよ~」
「いじけない、いじけない ケーキ食べたでしょ?」



「……それは、これとは」
「やだ、ちょっとハナカゴちゃん泣かないで!」
「泣いてないです!」
「ごめんなさい、軽率だったわ」
「大丈夫です……普通あんなこと引き摺らないですもん」





「ハナカゴちゃんは繊細だもんね」
「……んっ?もしかして馬鹿にしてます?」
「してないわよ?!ナイーブが過ぎるわね」






「誕生会」
生後14年の個体を教会に集めて行う、いわゆる誕生パーティ。
ケーキが無償で振舞われる夢のような行事。
教区以外からも集められ、参加者数は平均120。
14歳未満の憧れ。



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